【最新版】FILMシート(ver.9) の使い方

生産性、学習、チームワークを高めるシンプルなシート

toiee Lab リサ
13 min readJun 1, 2021

toiee Lab社内、ワークショップ、ラーニングファシリテーターに人気の「便利なシート」を紹介します。過去に以下の記事で紹介してきたシートの「最新版」です。

書き方を解説していきます。

最新版FILMシートは、無料でダウンロードしていただけます。是非、ご活用ください。

ダウンロードは、こちら

どこが変わったの?

もっとも重要な「振り返り」(結果の確認・フィードバック)がしやすくなりました。

具体的には「期待する結果」「プロセス」「前提・仮説」各項目に対して、「よかった点」「改善点」「予期せぬこと」「次やるなら」を考えられるように改良しました。

振り返りの精度が高まることで、以下の3つが期待できます。

  • 今の自分にあった「期待する結果」 を設定しやすくなる
  • 今の自分にあった「学習計画」を立てやすくなる
  • 「前提・仮説」(思い込み)に着目しやすくなり、さらなる学習の飛躍が起こる

それでは、さっそく。

使い方

2枚1セットになっています

両面で印刷すると、表に書き込み、裏に解説が印刷できます。

FILMシートを書いてみよう

1.真ん中を記入する

まず、「記入日」と「振り返り日」を記入します。

FILMシートは「振り返り」が大切です。リマインダーやカレンダーを使って、振り返り日を忘れないように工夫しましょう。

空いている部分には、タイトルを入れたり、図を入れたり、アイコンを入れたりして、楽しく取り組みましょう。

経緯や現状、取り組む前の気持ちを書くなど、ご自身の使い方を見つけてみてください。

2.青の項目を記入する

右上の「期待する結果」から書き込んでください。西洋文化の多くでは、右を「未来」として使います。それに習って、「未来」から逆算思考を促すために、右から順に書き込むように設計しています。また、「実際の結果」と比較しやすいように、右においています。

期待する結果は「やることリスト」ではなく、「こうなったらいいな」と思う結果です。例えば、

「1週間後に、こんな状況になっていたら嬉しい」

というような形で、書き出すことがオススメです(どんな使い方でも良いですが)。ただし、「達成しそうなこと」を書かないようにしてください。これでは、単なるやることリスト計画にしかなりません。

  • ちょっと頑張らないと届かない
  • あるいは、「どうやるかわからない」

など、「今まで通りだと、到達しなさそう」な期待する結果を書き出してください。これによって、学習が発生する余地が生まれます。

「期待する結果」を書き込んだら、次は「プロセス・姿勢」を書き込みます。期待する結果を得るには「何をしたらいいか?」考えて記入します。

「何をすれば良いか不明」な場合や自明な場合は、「どんな姿勢で臨むか」を書き込んでください。

書き込めたら、「前提・仮説」の項目へ進み、こう自問します。

「なぜ、この「プロセス・姿勢」を実行すると、「期待する結果」に到達すると思っているのか?」

これによって、あなたの前提、想定、パラダイムを明らかにする方向性を作ります。思いつかなかったら、「昔からそうだったから」とか「いつも、こうしてきた」など書いてくださっても構いません。

3.行動しましょう!

プロセス・姿勢を参考に、実際に行動しましょう。(仕事をする、生活する、趣味に取り組む etc..) 行動する中で、プロセスを変更しても問題ありません。

行動を終えたら、振り返りに進みます。

振り返りを行う ※重要

必ず振り返りましょう。

4.実際の結果と差異(緑の項目)を記入

行動した結果「どうだったか?」事実を記入します。失敗も成功も、全ては「学び・成長の機会」です。ありのまま書きましょう。

  • 「期待する結果」と「実際の結果」の差はあったか?
  • 「予定したプロセス」と「実際のプロセス」に違いはあったか?
  • 「仮説・前提」は正しかったか?外れたか? など

ポイントは、良し悪しの判断を下さず、事実を淡々と書くことです。よかった点・改善点は次のステップで深めていきます。

5.黄色の項目を記入する(4つの観点から振り返る)

一番下の段、黄色の項目へ進みます

「期待する結果」「プロセス」「仮説・前提」それぞれに対して、4つの観点(「よかった点」「改善点」「予期せぬこと・気づき・学び・発見」「次やるなら」)から振り返りを行います。

4つの観点は、記号で簡略化されています。(記号の説明は、以下の解説をご覧ください)

各項目に対して、上記4つの観点から振り返りを行って、記入してください。

黄色の項目の右から順に記入していきます。ステップ2で記入した青の項目を見ながら行いましょう。

まず、「👍よかった点」をあげましょう。よかった点からあげることで、脳がポジティブな状態になり、発想が湧きやすくなります。それから「🛠改善点」「💡予期せぬこと・気づき・学び・発見」を書きます。「💡予期せぬこと」は、大きな発見につながることが多いです。

これらをもとに、「➡️次どうするか?」を決定しましょう。

記入するときは、ご自身で略記号を考えるなど、どんどん工夫して使ってみましょう。

Ex)

黄色の項目を全て書き終えたら、次へ進みます。

7.赤の項目を記入する(まとめ)

メタ認知、1つ上の視点から、より大きな枠組みで考える場所です。

これまでに記入した内容を、一歩引いて長めてみましょう。

記入した内容の要約、学んだこと、次の一歩のための「まとめ」を書き込みましょう。

「次どうするか?」プランの指針を作りましょう。

8.次の一枚を書く

そして、次の1枚を取り出して、また書いていきましょう。このとき、先ほどのFILMシートによって得られた情報を元に

  • 期待する結果そのものを変える
  • 姿勢・プロセスを改める
  • 前提・想定が間違っていたら修正する

などを積極的に行いましょう。

補足

オススメの書き方は、

  • 週の初めにFILMシートを書き込んで、週末に振り返ることを続ける
  • 長めの作業を行うときに使う
  • 新しいプロジェクトや、一連の行動の前に書き込んで、振り返る

です。

活用シーン

私たちの脳は、「あらゆる活動をフィードバックシステム」によって行っています。高度な論理推論も、ニューラルネットワークという柔軟な仕組みで、フィードバックシステムとして機能させています。

このフィードバックシステムを効果的に活用して、あらゆるものを「学習」として取り組むことで(一般に考えられている学習と、ここでの「学習」は違います。生理現象として学習を定義したシステム・プロセスをを学習と定義しています)、

  • 日々の仕事の生産性
  • チームワーク
  • イノベーション、マーケティング
  • 学校教育
  • 単なる記憶や作業の能力の向上
  • スポーツ

などの質や効率を改善するために、FILMシートを使うことができます。

個人の学習に

受験や、趣味、資格試験の勉強に使ってください。具体的な目標を期待する結果に書くのも良いですが、「学習の仕方」を期待する結果に書くこともオススメです。例えば、

  • 毎日15分、英単語を覚える時間を作って実行する

を期待する結果に書き込んで、そのための生活の工夫をプロセスに書き出します。そして、なぜ、そのプロセスで良いか?を考えることで、毎日15分を実行できるような習慣づくりに使えます。

そうやってみたところ、「あまり役立っていない」ことに気づけば、勉強方法自体を変えていくととが必要です。

仕事の生産性アップに

仕事の生産性アップのためには「目的は何か?」が大切です。なんのための仕事で、何を満たすべきなのか?を知ることが、FILMシートを使えば自然に行えます。

振り返りを行うと、どんどん、改善アイデアが浮かんできます。

チームワークに

チームで1つのFILMシートを書いて、行動するようにすることで「学ぶ組織」の土台が作れるようになります。

経営に

現代のように変化の早い時代かつ、知識が資本となった労働環境では、仕事の性質上、自己目標管理が必要です。

FILMシートを使って、自己目標管理を行い、チームや同僚で振り返りを多なうことで、知識共有なども進みます。

よくある質問

Q. FILMシートの理論的背景を教えてください

A. FILM2学習理論をベースにしています

toiee Labの研究は、「問い駆動型」の学習方法が、意外にも、既存教育の学習効果を上回るという「思わぬ発見」からスタートしました。3年間、大学の授業に真面目に出席している成績優秀者でも、「実際、自分が何を学んでいるか?」が理解できていないことが往々にあります。

高校までの教育で培った「問題と答えのセット」を訓練にによって記憶し、回答する学習スタイルのまま、大学の授業で成績を収める人が大多数を占める現状では、上記のような「首席クラスなのに、本当のところは、何も理解してない」ことが発生します。

ところが「問い駆動型(別の記事で説明します)」学習を行うことで、これまで聞いてきた用語を整理し、新しく情報を仕入れ、自分なりに理解を進めることができます。そして、圧倒的に長く記憶にとどまるだけでなく、新しい知識を手に入れることも、容易になります。

さらに「問い駆動型」と「チーム学習」を組み合わせることで、効果が倍増します。このような結果から、現代教育に疑問を持ち、様々な学習理論や研究を調べた結果、「こうあるべき」という議論ばかりで、

  • 学習とは何か?
  • 学習のメカニズムは何か?
  • それらを踏まえて「どう学べば良いか」?
  • どう教えれば(学習のプロセスを設計すれば)良いか?

に明確な回答がなく、明確でシンプルな理論がありませんでした。そこで、人工知能研究と人の学習を対比させる中で、FILM2学習理論を構築しました。

詳しくは、別の記事をご覧ください。

Q. PDCA と何が違うのでしょうか?

A. 要素となる知識体系が近いので、かなり近い部分があります

PDCAサイクルの主な生みの親は、エドワード・デミング博士です。彼の研究は、当時の新しい科学の潮流を生み出す気かっけとなったノーバート・ウィナーの影響が濃いです。そして、ノーバートウィナーが、サイバネティクスを生み出すきっかけとなったものが、シャノンなどによる情報理論の研究で、特にノイズ除去のための「フィードバック制御」です。

PDCAサイクルは、主に品質管理のために開発されました。

  • Plan(計画) : 実績や将来予測などをもとに、業務計画を策定
  • Do(実行) : 計画に沿って業務を行う
  • Check(評価) : 業務の実施が計画に沿っているか評価
  • Act(改善) : 計画に沿っていない部分を調べ改善する

最後のAct が、次のPlanに相当させることで、螺旋を登るようにプロセスを辿ることがPDCAサイクルです。また、PDCAの経営版がOODAループです。

FILM2理論は、人の学習は「多段構造のフィードバック制御の延長」であると定義しています。その結果、人の学習サイクルは、PDCAサイクルで定義されたものと、出どころが同じため「似ているもの」になります。

違いを挙げるとすれば、次の3点です。もちろん、次の3点をPDCAサイクルに組み込めば、同じと言えます。

  1. 品質管理・達成よりも、「学習を目的」とするため、目標自体もダイナミックに変更する。実行可能な結果ではなく「実行可能でないかもしれない、期待する結果」を得るプロセスを作る
  2. そのため、「予想外」や「パターンに着目」することを主眼とする。予期せぬことを見つけ、新しい発見をすること、より不確実な状況を想定していること
  3. 前提、想定、パラダイムを変更することを目的としている。大きな変化、学習、根本的な変化は「想定、前提」が変わることです。それらを素早く見つけだすことが主眼となっています
  4. フラクタル構造(多段の入れ子構造)を想定している(螺旋ではない)。長期、中期、短期、瞬間に使うことを想定している。

詳しくは、別の記事で解説します。

PDCA理論の方なら、「PDCAの学習版」と考えていただいても構いません。どうであれ、大切なことは、「理論の優位性」よりも実践して、役立てることです。

Q. コツはありますか?

A. 3つあります

第一に「続けて、複数のシートを見比べること」です。自分の学習パターン(良いパターン、悪いパターン)を知るには、複数の結果が必要です。何かがうまく学習できていない時、同じようなアプローチをとっているかを知るには、たくさんの具体がなければ見つかりません。また見えていないことを見つけるにも、具体が必要です。そのためには「続けて、記録して、複数のシート」を眺めることが必要です。

次に「手書きがオススメ」です。箇条書きなどで行ってみたものの、やっぱり使いづらいです。紙とペンで絵を入れたり、図を入れたりして、書き込む方が思考が整理されやすいですし、後で振り返ることができます。

最後に「楽しむこと」です。人は、本来、学ぶこと自体が楽しい動物です。子供の頃のように、たくさんの疑問を出し探求し、目標を大きくして、チャレンジすること自体を楽しむことが大切です。そうすれば、具体的な技能や知識、スキルがもっと楽に手に入るはずです。

無料のコースが完成しました

FILMシートを使えば、toiee Labが提唱する「メタ探求型学習」(人間本来の学び方を最大限発揮した学習)が可能になります。

toiee Labは「一人でも多くの方に、FILMシートを使って、学ぶことを楽しんでほしい!」という願いを込めて、無料のコースを制作しました。ぜひ、ご覧ください。

コースはこちら

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